第77章 不知夜月
「わぁ………」
駅から一人での帰り道。
空を見上げて
白い息と共に思わず声が漏れる。
昨日、黒尾さんと一緒に見た月も
すごく綺麗だったけど
なんというか
今日は "スゴい"
昨日の月は大きくて白っぽくて
なんだかふわふわとした月。
今日の月は、
昨日よりもっともっと大きくて
黄金色に輝いて
あまりにも綺麗すぎて。
少し不気味な
なんだか吸い込まれそうな月。
ちょっと、怖い。
それくらい綺麗。
ビルの隙間から見える月を探しながら
自転車を漕ぐ。
だけど、昨日黒尾さんに怒られたばかりだから。
細心の注意を払う。
残念ながらやっぱり家からは見えない。
あのマンション、ほんと邪魔だなぁ。
なんて。