第76章 満月
「大丈夫ですよ」
「その自信はどこから?」
「だって黒尾さんいるし!」
ね?って笑いかけると呆れられた。
「気をつけろよ?」
そう言いながら手を取ってくれる。
ただ、黒尾さんは前を向いて
私は後ろ向き。
いつもと違うから、ちょっと不思議。
「あれ?!」
建物の隙間から何かがぼんやりと見えた。
月?!
と思ったけど街灯か。って
いや待って?やっぱり月?!
「え?!」
「なに?見えた?」
黒尾さんも振り向くんだけど
二人で首を傾げる。
「え?アレ月?」
「いや、わかんないです。
もっと進みましょう!」
そう言ってちょっと走る。
「おい!気をつけろよ?!」
「子供じゃないんで大丈夫です!」
「おい!自転車!」
っっ!
横から出てきた自転車と、ついぶつかりそうに。
危ない、危ない。
自転車に乗っていた人と
スミマセンでした。ってお互い謝る。
「言わんこっちゃない」
「…………たまたまです」
「おーい?奈々チャン?」
「………スミマセンでした。
気をつけマス」
「そうして下さい」
………ちょっと反省
だけど
「わぁ!」
「おぉ!」
明くて、大きな月が
やっと姿を現した。
「すげぇな」
「でしょう?!」
もう一回見てみたくなっちゃうでしょ?!
「わざわざ月を見るのに、このクソ寒い中外出るのって。
って思ったけど」
「悪くないでしょ?」
「デスねぇ。
そもそも月を見に外に出たの初めてだわ」
「私はまぁまぁあります」
「じゃあ俺もこれから、まぁまぁあるってこと?」
「そういうことになりますね?」
これからも一緒に見てくれるって言ってくれる黒尾さんの腕に
思わず抱きつく。
「えへへ」
見上げると目が合う。
そんな私の頭を
くしゃくしゃって。