第75章 ウェディングドレス.2
「私、あの日のこと
よく、覚えています。
………映画を見に行く途中に
このショールーム見つけて、
へぇ、こんなとこにショールームがあったんだ~。
わぁ、ドレス綺麗だな~って。
雑談と同じレベルの会話だったんです。
で、いつもの黒尾さんなら、
これがウェディングドレスじゃなかったら、たぶん。
黒尾さん、見る?って
聞いてくれたんじゃないかな?って」
喉の奥で、言葉が詰まる。
「だけど、そうじゃなかったのは
私が見ていたソレが
ウェディングドレスだったからなんだって。
私、こんなんだから
好きとかずっと一緒にいたいとか。
それって "イコール結婚" だったんです。
だけど、好きだからって
ずっと一緒にいたいからって。
イコール結婚とは違うよなって、その時思いました」
あの日のことを思い出す。