第72章 お盆休み(海で)
「………はぁ、無理」
ゼエゼエと息を切らしてその場にしゃがみ込む。
そんな私を笑いながら
なぜか息も切れていない黒尾さんが今度はこちらへ。
「………なんでそんなに涼しい顔してるんですか?」
「朝はちょっとだけ涼しいよね」
「………いや、そういうことじゃなくて」
わかって言ってるんだろうけど。
「大丈夫?(笑)」
絶対面白がられてる。
「全然心配してないくせに………」
相変わらず、
ゼエゼエとが切れている私の背中をさすってくれる手は優しいからズルい。
「座る?」
「そうします」
スカート大丈夫?って心配してくれる。
ふざけてるのにこういう紳士的なとこ?
みせてくるのも、本当にズルい。
「はぁ………
いつまでも若い気でいますけど
あっという間にアラサーだし、
運動なんて通勤の自転車くらいだし。
このままどんどん年老いていくのかと思うと
ちょっと悲しいですね(笑)」
笑いながら言ってみたけど
自分の体力の衰え方にはちょっとゾッとする。
五年前まではもっと走れてたのに。
たぶん。
「………ただ、俺は。
奈々と一緒に
歳を重ねたいと思っていますけど?」
「それってプロポーズですか?(笑)」
前はなんとなく言えなかった
こういう冗談のやり取りも楽しい。