第72章 お盆休み(海で)
まだ太陽も高くない朝6時
黒尾さんと並んで
朝の海を散歩する。
去年のお盆休み
黒尾さんと一緒に
温泉旅行に行く予定だった。
だけど
行かなかった。
というか、行けなかった。
だから、一年越しのリベンジ。
今年も黒尾さんが同じお宿を予約してくれて
昨日はゆっくり温泉に浸かって
美味しいお料理とお酒をいただいて。
そして夜
たまたま近くで花火が上がって
部屋から一緒に花火まで見ることができた。
海の近くのお宿で、部屋まで波の音が届いて
黒尾さんと一緒にここにこれてよかったなぁって。
実は一人でジーンとしたりした。
そして、心も身体も癒された。
今日は二人で早起きをして
朝から近くの海まで来てお散歩へ。
今日も快晴
朝日が海に反射して
キラキラと輝く世界が続いている。
この時間はまだ誰もいなくて
長い海岸は私たちの貸し切り状態。
最高の贅沢だ。
お互いサンダルは浜辺の入り口で脱いで
砂浜を素足で歩く。
まだ夜を含んだ砂浜は
少しひんやりとしていて気持ちがよかった。
「貸切ですね~!」
「だなァ」
「あー気持ちいい!最高ですね!」
「だなァ」
ひとり、波打ち際まで行って
波を蹴ると
しぶきが舞って
キラキラと朝日が反射して
宝石みたいだなって思った。
潮風が私たちの横を通り過ぎて
スカートがふわりと揺れる。
「おー。パンツ見えそー」
声がした後ろを振り向くと
ニヤニヤしている人が。
「最低ですね」
「いーじゃん。俺以外いないし。
てか俺以外がいるところでパンツ見せちゃダメよ?(笑)」
「見せないし、朝から何言ってるんですか!もう!」
走って黒尾さんを捕まえようとしてみたけど
同じように走って逃げる黒尾さん。
に、追いつけるはずなんてなく。
私の中でずいぶん走ったところで息が切れて
追いかけるのを諦めた。