第71章 帰り道
仕事後のいつもの帰り道
いつもと違うのは
隣に黒尾さんがいるということ。
金曜日
黒尾さんに合わせて会社を出て
いつも乗ってる電車に乗って
いつもの駅で降りるんだけど。
また、黒尾さんが隣にいてくれるってことが
どうしようもなく嬉しい。
「ちょっと待っててください!
自転車とってきます!」
「おう」
駐輪場から自転車を押しながら
黒尾さんの元へ向かうと。
「あれ?」
少し首を傾げる黒尾さん
「どうかしました?」
一緒に首を傾げる。
「あ、いや。
チャリ替えたんた」
あーーーーーー
そっか。黒尾さんと別れた後だったな。
「そうです。黒尾さんのせいです」
「ん?」
ハテナ顔の黒尾さん
「黒尾さんのせいで、寝坊しました」
「俺?」
「はい。黒尾さんに振られて夜眠れなくて」
「………ゴメンな?」
なんだか嬉しそうな黒尾さん
この手の会話は、すでにネタになっている。
こうやって、一緒に過ごしていない時間を少しずつ埋めていく。
その作業が、実はすごく好き。
「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「ん~?俺のこと考えててくれてたのか~って」
「なんかやっぱり、私ばっかり」
「俺もですよ?
クマ作って、やっべぇ顔してました」
黒尾さんのそんな顔、想像できない。
「嘘ばっかり」
「ほんとだって~」
やっぱり笑っている黒尾さんは
信用ならない。