第70章 翌々日(日曜日のお別れ)
日曜日の午後
あいにくの雨
目の前には、コーヒーを飲む一静さん。
1ヶ月以上ぶりに、連絡した。
「奈々ちゃんとお昼に会うのって、初めてだね」
「そうですね」
この半年、頻繁に会っていた私たち
だけど、それは
必ず日が沈んだ後。
別に、約束したわけじゃない。
だけどお互い、なんとなく。
こうやって休日に会うのも、暗くなってからばかりだった。
「一静さん」
「んーーーー?」
……………。
今日、一静さんを誘ったのは
お別れの、挨拶のため。
………黒尾さんともう一度
一緒にいようって約束した一昨日。
昨日の夜、お風呂に入ろうとすると
鏡に映る私の体には無数の赤い痕。
一年前は当たり前だったのに
一年ぶりのそんな自分に、なんだか気恥ずかしくなった。
そしてまた
じわじわと嬉しさが込み上がってきた。
だけど、
一静さんを思い出す。
あの人が私に痕をつけることなんてなかった。
だって私たちは、そういうんじゃない。
だけど、
会わなきゃ。
近くにあったスマホを手に取って
トーク履歴をずいぶん遡って。
【こんばんは。お久しぶりです。
明日のお昼、会えませんか?】
元々会わずに終わることができる関係だった。
だけど、この半年
彼にも支えてもらった。
一静さんがどう思っているかなんてわからない。
だけど、最後に
会いたかった。
黒尾さんとのことは、まだ何も話していない。
だから今日、
それを話さなきゃいけないんだけど。
………………。
呼びかけておいて、続きを話さない面倒な私だけど
一静さんはただ黙って、待っていてくれる。