第68章 その後.2
「"アキくん" はいーの!
俺、嫉妬しちゃうから」
「そうなんですか?
でもいつか、アキくんと会ってほしいです」
「えーーーー。
でも嫌だって言ったら、カッコわりぃよな?
ってもう言ってるからダメだな?」
なんて
そんな冗談を言いながら、そっとベッドに降ろされて
また
上から口付けが降ってくる。
「ねぇ、スーツ」
シワになっちゃいます。って。
「そうだな」
スーツのジャケットを脱いで横の椅子に掛けて
そして久しぶりに見るネクタイを緩める姿に
どうしようもなくドキドキする。
「…………あと、シャワー」
「ゴメン、それは無理。
もう待てない」
ただ、私も待てるかと言われると
「………そうですね」
予想外だったのか
私の返事に目を見開かれて
それがなんだか可笑しくて。
「黒尾さん、驚きすぎです?」
「や、ゴメン。奈々が俺と同じくらい
俺のこと好きでいてくれてんのかな~って思った」
「今わかったんですか?」
私も今、わかったんだけど。
「黒尾さん?」
「ん?」
「好きです」
優しく笑う黒尾さん
「…………俺の方が好き」
大きな手が、私の髪を優しく撫でる。
「負けません」
黒尾さんの首元に腕を伸ばして
今度は私からキスをする。
「………奈々」
「はい?」
私の名前はこの26年と約半年
ずっと "奈々" なんだけど
黒尾さんから呼ばれる名前が
特別なのは、なんでかな。