第4章 合コン
「アキくんさ~」
「てかその"アキくん"っていうのも懐かしいな」
「ん?」
「バイト先でアキくんって呼ぶの、奈々だけだったからな」
「そうだっけ?」
「みんなからは木葉か木葉さんって呼ばれてたよ。
ま、いいけど。で?」
「あ、そうそう~!」
それから結局終電前まで飲んで。
「あ、そうだ。連絡先教えて」
「うん」
そう言ってスマホを取り出すと。
やば。
全然見てなかった。
"黒尾さん" からのメッセージ。
「ごめん、ちょっと待って!」
急ぎだったらどうしようって心配になりながらメッセージを開く。
【お疲れ様。来週の金曜なんだけど、予定ある?
よければこの前のとこリベンジしませんか?
今度はちゃんと予約も取れそうだから。】
仕事のことじゃないとわかってホッとする。
「大丈夫?仕事?」
「いや、違った。私がもらってもいい?」
アキくんの連絡先を追加して。
スタンプを押す。
「お、きた。
ってお前、もう少しかわいいスタンプないの?」
「えー?めっちゃかわいいじゃん!」
「まぁ、いいけど。なぁ、また飲み行こうぜ」
「うん!私いつでも暇だから誘って!
あ、そろそろ時間ヤバいから行くね!今日ありがとう~!」
バイバイってアキくんに手を振って、改札を抜ける。
人が多いホームで、スマホを取り出して。
さっきみた黒尾さんからのメッセージに返信する。
【大丈夫です!楽しみにしてます。】
ほんと、別れてからの方が週末が充実してる気がする。
まだたまにふと寂しさに襲われてしまうことはあるけど。
たぶんこれも、いつかなくなる。はず。