第68章 その後.2
たぶんさっき、黒尾さんがスマホをいじっていたのは
ビジネスホテルを検索してくれていたから。
カードキーでロックを解除して
手を引かれて部屋に入って。
まだ扉も閉まりきっていなかったけど。
黒尾さんに抱きしめられた。
私の首元に顔を埋めるように抱きしめられて
ふわりと
黒尾さんの香りに包まれて。
今日一日で
今まで我慢してきた一年分の涙を出そうとしてるのか?
ってくらい、
ポロポロとまた、溢れる。
だけど、それを拭うよりも
黒尾さんの大きな背中に
そっと手を伸ばして。
それがまるで合図になったのか
黒尾さんに唇を塞がれる。
やっぱり私は今日一日で
一年分の涙を出し切ろうとしてるのか。
また、溢れ出すものが止まらない。