第65章 間違い探し.2
「……ほんとにな」
この一年
二人揃って勘違いして
二人揃って、隣にいない相手を想って過ごしていた。
目の前の次々に運ばれてきた料理はとっくに冷めていた。
俺のジョッキはいつの間にか空になって
奈々のグラスは汗をかいて
ほとんど解けた氷
「………何飲む?」
「じゃあ、同じので………」
近くを通った店員を呼び止めて注文する。
「冷めちゃったな。
けど、コレ美味いよ」
奈々の方に差し出すけど
黙って下を向いたままの奈々。
頼んだ飲み物が運ばれてくる。
それを半分くらい
ゴクゴクと勢いよく飲む奈々に、一瞬呆気に取られる。
「………黒尾さん」
「ん?」
「黒尾さんは、お互いの誤解が解けて
よかったと、思いますか?」
「ウン。もちろん」
「………それだけ?」
奈々が言いたいことは………
たぶん、わかる。
だけど
「奈々は?」
ズルい聞き方だなってわかってる。
だけど
情けないけど。
拒絶されるのが、怖かった。
「私は………」
余裕があるように見える表情を意識して。
だけど、心臓が口から飛び出すんじゃないかってくらい
次の、奈々から出てくる言葉に緊張した。
「黒尾さんのことが、好きです」
ガヤガヤとうるさい店内
小さな声
だけど、ちゃんと届く。
「だから、黒尾さんと一緒に
いたい、です」
何度も、そうならないかと願った。
俺たちはもう一度
やり直すことはできないのか?と。
……………。
おい、お前は男だろ?
しっかりしろ。
泣くなよ?俺