第65章 間違い探し.2
二人の間に、沈黙が流れる。
「じゃあなんで、別れるって言った時
"わかった" なんて言ったんですか………?」
「だからそれも。
俺もお前に別に好きな人がいるんだって思ってたから。
その時、俺福岡で、
お前が辛い時に側にいてあげることができなかったし。
だから別れたくなかったけど
でも、奈々がそれを望むならって」
自分で説明しながら苦笑する。
なんだ。二人して勘違いしていたのか
と。
「ちなみに確認だけど。
"アキくん" のこと好き?そうじゃない?」
「アキくんのことは好きですけど。
黒尾さんへの好きとは全然違います。
私が好きなのは、もうずっと。
…………黒尾さん、だけです」
俺のことを好きだと言ってくれる奈々に
どうしよう、泣きそうだ。
「私たち、
なんでこんなことになったんでしょうか………」
唇を噛み締めてそう言う奈々をただただ見つめる。
本当にな。
この一年
奈々がいなかった一年
今まで思ったことはなかったけど
色がない、と感じた。
寒いと言いながら
俺の側に寄ってくる奈々がいなかった。
朝から吐く息が白くなかったと言う、
手袋がいらなくなったと言う。
桜を見る表情、
新緑が柔らかそうと言いながら伸ばす指先。
空が
綺麗だと言う奈々
どこを見ても
奈々がいるのに、いない。
モノクロの世界
めぐる季節に
思い出すのは、いつも
奈々のこと。