第65章 間違い探し.2
「いや、俺あの時
こっちの仕事も掛け持ちしてたの。
覚えてる?」
「………はい」
「その時さ、広告代理店に高校の時の知り合いがいたんだよ。
で、その子が "やっちゃん" なんだけど」
説明する俺に
奈々の不機嫌は相変わらず継続中
「で、打ち上げの時。やっちゃん徹夜続きだったみたいで。
なのに空腹で飲んで悪酔いして。
で、やっちゃんの彼氏も知り合いだったから
彼氏に迎えに来させて、そこまで送ってった。
ってことがあったから、そのことか?」
というか
ようやく思い出したその出来事にきっと違いない。
「………じゃあ黒尾さん。
その人のこと、好きだったんじゃないんですか?」
「いや、言った通り昔からの知り合いで
やっちゃん彼氏いるし、彼氏も知り合いだし」
「………じゃあ私の勘違いだったってことですか?」
「ウン。たぶんそう」
「でも、その前。
黒尾さん、仕事で結構こっちに戻ってたんでしょ?
でもそのこと。私、知りませんでした。
さおりから、黒尾さん
週の半分くらいはこっちで仕事してたって聞いて
ショックでした………」
「いや、それは。マジでゴメン」
「………やっぱり謝らなきゃいけない何かが
あったってことなんですね」
諦めたような表情の奈々
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあ、どういうことなんですか?」
「あの時、本当にいつどこにいるのか読めなくて。
お前との、約束破ってばっかりだったし。
だから、落ち着くまで。
ちゃんと、約束を守れるようになるまでは
無責任に会いたいなんて言わない方がいいと思ったから。
だけどそれで傷つけていたのなら
本当に、ゴメン」