第63章 過去(黒尾)
あれから頻繁ではないものの
お互いできるだけ連絡するように努めた。
だけど、8月に入って
奈々からの連絡が一気に減った。
また大変なのかもしれない。
だけど、奈々の仕事も様子もわからなくて。
一度、原田に連絡して
奈々の様子を聞いてもらった。
そして、原田から返ってきたのは
【奈々、相変わらず大変そうです】
具体的に "何が" というところまではわからなかったけど
というか、たぶん
原田も俺も、たぶん聞いてもわからないだろう。
ただ、原田も奈々のことは心配してくれていて
何かあったら連絡します。と言ってくれた。
だけど、お盆休みの直前
旅行を予定していた日、
実家に帰らなければいけなくなったと連絡が来た。
……………。
会いたい。
一緒にいたい。
だけど俺に、そんなことを言う権利はない。
【すみません。キャンセル料は払います。】
そう謝る奈々に
【心配するな、また今度行こうな?】
と返信した。
…………お盆休みの予定がなくなった。
とりあえず、研磨に連絡。
【お前ら集まるのいつだっけ?】
お盆休みの期間中、久々にバレー部で集まろうと話が出た。
だけど、ちょうど旅行の日程と被っていたから
揚々と断った。
だけど、こんな中
一人で家にいる方がしんどい。
研磨からの返信で日程と時間を確認して、
幹事の犬岡にやっぱり参加すると伝えた。
バレー部の集まりの当日
集合場所へ向かう。
ボーッと歩いていたら
不思議だよなぁ。
これだけ人がいるのに、
道の反対側に、奈々らしき人を見つけて。
だけど、あれ?
あいつ、実家って言ってたよな?
…………………。
距離もある。
人違いか?
とりあえず、電話してみると
道の向こうの人物は、さっきまで見ていなかったスマホを見て
だけどまた、視線を外した。