第62章 6月中旬(待ち合わせ)
「黒尾さんは覚えてないかもしれないですが
………一年前
心配してくれた黒尾さんに当たってしまって、本当にすみませんでした。
黒尾さんも大変だったのに。
本当に、すみませんでした」
言いたいことは山ほどある。
伝えたい言葉も沢山ある。
だけど、何よりも伝えたかった
お詫びの気持ち
本当にすみませんでした。
「顔、上げて?」
黒尾さんの優しい声
その声に、恐る恐る顔を上げる。
「それはお前が、
…………ゴメン。佐藤が謝ることじゃないよ。
俺の方こそ、約束破ってばっかでごめんな」
首を横に振る。
「黒尾さんは、悪くないです。
黒尾さんだって大変だったのに。
私、知ってたのに。
なのにあんな子どもみたいなこと言っちゃって」
本当に恥ずかしいです。
「いや、俺がよくなかった。
本当にゴメンな」
……………だけど、その後
こっちに仕事で帰ってきてたことは
教えてくれませんでしたよね。