第62章 6月中旬(待ち合わせ)
確かに
黒尾さんと話をするきっかけがほしいと思っていた。
し、赤葦さんにもそう言った。
だけど、こうっ!
こんなに突然、その機会が訪れても
何を話せばいいのか。
心の準備なんて、もちろん一切できていない。
「赤葦、なんて?」
「………来れないそうです」
生理前で余計
感情のコントロールが上手くできない。
この場をどうやり過ごせばいいのかもわからない。
「もしさ、佐藤が良ければ。
飯、食いに行かない?」
……………。
「無理にとは言わねーし。
………ウン、今日は帰るか!
金曜、疲れてるよな?」
返事をしない私に
「………黒尾さんは、大丈夫なんですか?」
「………うん。赤葦と飲むつもりだったし」
黒尾さんの困った顔
黒尾さんのことを好きだと思う自分は、
こんなに可愛くなくて、嫌なヤツじゃないと思いたいのに。
最後の私と一緒
ものすごく、可愛くない。
「………じゃあ、お時間いただいてもいいですか?」
「もちろん。何食べたい?
腹、減ってるよな?」
「………はい」
「じゃあ、俺が店決めていい?」
「………お願いします」
どうしよう。
黒尾さんが黒尾さんで、なんだか泣けてきた。
優柔不断だった私は
いつも黒尾さんに頼りっぱなし。
食べたい物がある時は、コレ!って言うくせに
特にない時は、そんな私を見かねて
いつも黒尾さんが決めてくれていた。
やっぱり黒尾さんが好き。
だけどもう、
黒尾さんはそうじゃないのかと思うと。
やばい。
本当に泣けてきた。