第61章 6月上旬(おにぎり宮.2)
「いらっしゃいませ~!」
「こんばんは~」
「お~!奈々ちゃん!
赤葦くんあっちにおるで!」
「あ、ほんとだ!」
初めて赤葦さんとここで会った日
あれから宮さんは「奈々ちゃん」と呼んでくれる。
なんだか一気に常連感増してない?!
嬉しい。
「赤葦さん!お疲れ様です」
「あ、佐藤さん。遅くまでお疲れ様です。
よければここ、どうですか?」
隣の席を勧めてもらう。
「ありがとうございます。
あ、ただ赤葦さんのタイミングで帰られてくださいね?」
すでに食事は終えている様子の赤葦さん
「はい。でもまだ飲むつもりだったので」
「じゃあ私も」
食事とアルコールをお願いして
先にアルコールを出してもらう。
「遅くまでお疲れ様でした」
「赤葦さんも。お疲れ様でした」
仕事後のグラスの響く音は
いつ聞いても心地いい。
とりあえず、最近の仕事の話から
途中でいろんな話もはさみつつ。
そして仕事は相変わらず順調だから、相変わらず楽しい。
「次のサンプル、来週中には届く予定です」
「お手配ありがとうございます」
「今度は御社にも最短で届くように手配しますので
ご安心くださいね(笑)」
前回、赤葦さんたちのところへサンプル到着が遅れた時は
倉庫の人に任せっぱなしになっていた。
いや、別に普通というか
それが本来のやり方なんだけど、
今回からは私も入ることにした。
もちろん倉庫には行ったことないけど、
そのために倉庫のシステムも勉強した。
たぶん、今後もなにかしら役に立つはず。
そして、私ってこんなに勉強熱心だったんだ。と自分で感心する。
学生の頃にこれだけ勉強できてたら、
私の人生もっと違っていただろうなぁ。なーんて。
「助かります。よろしくお願いします。
あ、そういえば黒尾さんと同じ会社なんですね。驚きました」
「私も。赤葦さんと黒尾さんがお知り合いでビックリしました」