第60章 5月中旬(海.2)
「なにが?」
「だって相手は、話したくないかもしれないし」
「それでも」
もう一度、アキくんを見る。
いつもの、優しい顔。
「どんな形でも、お前には幸せになってほしいと思ってるよ。
相手が、何て言うか
何を思うか、思わないか。
そこまではわからないけど。
だけど、奈々には幸せになってほしいよ」
俺はずっと見守ってるよ。
最後の言葉は
とてもとても小さな音だったけど。
「…………わかった」
「頑張れよ。また話、聞くし」
「慰めてくれる?」
「必要であれば」
「じゃあよかった」
「おう」
また二人で、星空を見上げる。
満天の星空が私たちを包み込む。
「…………綺麗だね」
「おう」
世界は残酷だ。
だけどそれと同じくらい
世界は、優しい。