第60章 5月中旬(海.2)
「私ね。元彼のことが、大好きみたい」
言葉にするのは怖かった。
だけど
言葉にしようと思った。
黒尾さんのことが、好き。
もう、ずーーーーっと好き。
最初から、最後まで
そして今も、ずっと
黒尾さんのことが、大好き。
黒尾さんは私のことなんて
もう何とも思っていないと思う。
どんなに好きだと思っても、
もう一緒にいることはできない。
だけど、
それでも。
「アキくん」
「んー?」
今まで私の相手をしてくれて
「ありがとう」
「…………どういたしまして」
アキくんの方を見るけど
アキくんは星空を見上げてる。
「先にごめんね?」
「んー?」
アキくんどうぞ。って言ったけど
「…………何言おうとしたか忘れたわ(笑)
だけど」
アキくんの次の言葉を待つ
「お前、そいつと一回ちゃんと話せ」
「………何を?」
わかってるけど
「…………お前の気持ち」
「話さないよ」
「それは俺が許さない」
「なんで?」
「奈々、俺が今までどれだけお前の世話してきたか
忘れた?(笑)」
アキくんが呆れた顔で笑いながらこっちを見る。
「………忘れるわけ、ないじゃん。
アキくんがいてくれなかったら、私たぶん。
まだ泣いてた」
本当に
感謝しても、しきれない。
「じゃあ、俺からのお願い。ちゃんと、話せ」
………………。
「……………わかんない」