第57章 4月下旬(おにぎり宮)
「赤葦くんなぁ、高校の全国大会で準優勝してるんやでぇ!
はい、これサービス!二人で食べて!」
そう言いながら
さつま揚げの盛り合わせを出してくれた宮さん
「え!すみません。ありがとうございます」
「ありがとうございます。頂きます」
「ええよ、ええよ~!」
「ありがとうございます。
てか赤葦さんめちゃくちゃ凄いじゃないですか!」
「俺がすごいわけじゃないですよ」
………謙遜するってことは、
レギュラーとかじゃなかったのかも。
「何言うてるん!自分、全国準優勝チームの正セッターやったろ?!」
「セッターって難しいんですよね?
ゲームを組み立てる?人?」
「お姉さん、よう知っとるやん!」
「あ、それだけしかわかんないですけど」
………黒尾さんに教えてもらった。
黒尾さんの幼馴染の研磨さんがセッターで、
すごかったって話を何度も聞いた。
「いやいや~!それだけわかっとれば十分やで~!
てかお姉さんよく来てくれるけど、名前知らんかったから教えてもらえません?」
「あ、申し遅れました。佐藤です」
「ちなみに俺らより年下なやんな?」
「そうだと思いますけど」
「あ、今年27です」
今はまだ4月で、誕生日までは半年以上あるけど
私、今年27歳になるんだ。
「まぁ、そのくらいよな!」
「ちなみに赤葦さんと宮さんっておいくつなんですか?」
「今年31です」
「俺らもあっという間に30の年になったと思ったら、
もう1年終わってもうたな!てか準備してくるわ!
もう少し待ってて!」
「はい。お願いします。
佐藤さん、これ頂きましょう」
さっき宮さんが出してくれたさつま揚げを、
そっと私の方に寄せてくれる。