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【ハイキュー】思い出すのは、いつも【黒尾鉄朗】

第50章 11月(松川)


「時間、まだ大丈夫?

大丈夫ならお誕生日の前祝いに

もう一杯どうですか?」



「どうせ、帰ってもすることないんで。

一静さん、何飲んでるんですか?」



「ん?飲んでみる?」





そう言いながらグラスを差し出してくれて





「じゃあ、いただきます」





一口、口に含む。





「あ、スッキリとして飲みやすい。

美味しいですね」



「同じのでいい?」



「はい」



「すみません。同じの」





出してもらった

一杯に注がれたグラスをそっと持って、


口元に持っていく。





「んーーーー。美味しい。

一静さんはよく一人で飲むんですか?」



「んー?最近は、ね」



「何かあったんですか?」





なにか、含むように言われたその言葉への疑問を

そのまま言葉にする。





「まぁ、よくある "彼女と別れた" ってヤツ」





そして、期待通りの返事が返ってきて



"辛い思いをしているのは、私だけじゃない"




ただ、この返事を期待していた自分は


すごく意地が悪いな、とも同時に思う。





「そうなんですね。

長かったんですか?」





「うーん。約7年とちょっと、かな」





…………あぁ。





「同じくらい………」





チリッ





ふと、あの時の胸の痛みを思い出す。




だけどもう、

引っ掻き傷くらいの痛み。





「奈々ちゃんも長かったんだ」



「あ、でも前の前の彼氏ですけどね」





ヘラッと笑って答える。





「結構おもしろいと思うんですけど。

その元彼、高校生から付き合ってて

婚約までしてたんですよ。


ちなみに、初めてお付き合いした人でした。


ただ去年の、あ、ちょうど今くらいだったんですけど。

婚約破棄、されちゃって」





人に話すのは何度目かわからない

私の人生のだいぶ印象的なエピソード。



今日初めて会ったこの人にも

いつも通り面白おかしく話す。
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