第50章 11月(松川)
「明日誕生日なんだ?
少し早いけどおめでとう。
………で、こんなところに一人でいていいの?」
すこしイタズラに笑いながら放たれた一静さんの一言に
私の心はちょっと不機嫌に。
「察してください」
そして、自分で言って虚しくなって
目の前のグラスを手に取り残りを体に流し込む。
ただ、この人自身は嫌じゃない。
「失礼しました」
眉を下げながら困ったような顔でそう言う一静さんを見て
グラスを置いて。
「ほんとですよ!」
冗談のようにそう返す私に
ホッとしたような、
そんな隙のある表情を突然見せられて
思わずドキッとした。