第3章 土曜のお昼
「てか黒尾さんなんだ?」
「社内だとね~!
仕事できるし優しいし。身長も高くて顔もイケメンじゃん?」
「やっぱり。こんな身近にもいた」
「え、何が?」
「いや、黒尾さんって人気ありますよって言ったら、本人自覚なかったから」
「なになに?!いつそんな話したの?!」
「え?いや、昨日黒尾さんとご飯食べに行って。その時に」
「はぁーーーーー?!なにそれ?!
え、二人で?!なんでそんなことになったの?!」
「え、ただ私が振られて落ち込んでたから、気を遣わせてしまっただけだよ」
「なんで黒尾さん、奈々が別れたこと知ってんの?」
「この前残業した日、黒尾さん戻ってきてくれて手伝ってくれて。
で、駅まで一緒に行くときに。
……って、あれ。なんでそんな話になったんだっけ?覚えてないわ(笑)」
「えーーーーー。なにそれーーーー」
「だから、私に気を遣ってご飯誘ってくれたの。申し訳ないことしちゃった」
手元のグラスをゆらゆらと揺らす。
「いいなーーーー!私も黒尾さんと食事行きたい!」
「誘えば行ってくれるんじゃない?」
「誘われたいじゃん!え、他になんかないの?」
「またご飯食べに行こうって言われた。
まぁ、こんな話聞かされたら、こいつヤバイってなるよね。
ただ昨日話聞いてもらって、もう結構大丈夫なんだけど。
あ、だけどそういえば妊娠のこと知った次の日、黒尾さんだけには前の日泣き腫らしてたのバレちゃったな。
黒尾さんってほんとすごいよね~。まわりのことよく見てて」
「へぇ~~~!」
「え、なに?」
「いや、なんでも?」
「さおりは?黒尾さんがいいならアピールすればいいじゃん。
今彼女とかもいないらしいよ?」
「いや、身近すぎていい」
「あ、そう」
「あのくらいのポテンシャルの人を、私はもう少し離れた場所で探す~!
とりあえず次の合コン!製薬会社!」
「私は行かないよ~」
「社会勉強!他の人が25歳までに経験してること、奈々はしてないんだよ?!」
そう言われると、興味がないわけでもない。