第3章 土曜のお昼
「いや、まじで最低すぎて意味わかんないんだけど。
てかその女がまじで意味わかんない。絶対計画的に妊娠したよね?」
「いや、知らないけど(笑)
けど、あの人もあの人だし。させてるわけじゃん?
二人とも最低だって思ってるよ」
目の前のさおりがすごく怒ってる。
そしてこの話をするのが2度目の私は、驚くほどに冷静だった。
「……大丈夫?」
「うん。しんどいのはしんどかったけど。
だけど結構前向きになりつつある」
「そっか。けどさ、コレ言っていいかわかんないけど。
もし仮に相手が妊娠してなければ、何も知らずに結婚してたってことでしょ?」
「そうなるね~。そう考えると、籍入れる前でよかったな~」
ほんとだ。
このことがなければ私は一生間抜けな女として過ごしていたのかもしれない。
「世の中の半分は男なんだから!
あ!そうだ!来週一緒に合コン行くよ!」
行かない?じゃなくて、行くよ!って。
「え~でも合コン行ったことないし」
「だーかーらー!行ったことないから行くんじゃん!どうせ予定ないんでしょ?」
「ひっど!あるかもしれないじゃん!」
「え、あるの?」
「ないけど」
「はい、決定~!
奈々、高校生からずっとだったから、いろんなこともいろんな人も知らないでしょ?
元彼よりいい人なんていっぱいいるって!」
「ずっと合コン行ってるさおりに言われてもなぁ~」
たぶんさおりはここ2年くらいは彼氏はいない。
「私は理想が高いだけです!
私はさっさと寿退社したいから、次付き合う人と結婚したいって思ったら、そりゃ慎重になるよ~。
だから街コンにも行くし、マッチングアプリもやるし!」
「さおりの理想はどの辺なの?」
「え~?身近で言えば黒尾さんとかかな?
あ、すみませーん!同じのお願いします!」
空になりかけているワイングラスを少し高めに上げながら、さおりが店員さんを呼ぶ。
「あ、すみません。私も同じのを」
今日は飲もう!って決めている。