第46章 9月2日
課長がこんなに優しいのは、
たぶん私への罪悪感というか
多少の申し訳なさというか。
本来なら自分がすべき仕事を私が全部やってきたから
今までの感じからも、少なからずそう感じる部分はあった。
体調が悪いのは本当。
だってさっき薬飲んだし。
誰にでもなく、自分に
呪文のように何度も言い訳をしながら
そそくさと会社を出て、電車に乗って。
………この時間帯ってこんなに空いてるんだ。
普段は座ることができないけど、
今の私にはすごくありがたい。
電車を降りて、いつも通り自転車をこいで、
………いつもと違うのは、太陽がまだ高すぎて
いつも以上にジリジリと暑さを感じていること。
汗が首筋を伝う
マンションの駐輪場の定位置に自転車を停めて
オートロックを開け、エレベーターに乗り
部屋の鍵を開ける。
昨日までの2日間、
イレギュラーだった
"家に入る前にスマホの確認をする" という儀式は、
もう必要ない。
いつも通り玄関に入って
いつもと何も変わらない、自分の家なんだけど。
ふわりと
大好きだった香りが私を包み込む。
黒尾さんの部屋と、同じ香り