第41章 お盆休み(木葉)
あれからずっと、アキくんは
私の手を繋いでくれていた。
いったん恐怖からの涙は止まったものの
気を緩めると黒尾さんのことを想って
また、溢れそうになるのを
グッと
唇を噛んで堪えた。
コンビニで適当にお弁当やおつまみやお酒を買って
「散らかってるけど。どうぞ」
「………お邪魔します」
「その辺適当に座って。飯食うよな?」
「うん」
「じゃ、温めるわ」
「ありがと」
……………なんか普通に友達の家にお邪魔してるつもりではいるんだけど。
アキくんも一応男の人だったって
本当に今さら気付いてしまい、
なんとも言えない気まずさと罪悪感に襲われる。
いや、別に何もないよ。
何もないけど。
一応、まだ
付き合ってるんだし。
………いいんだろうか、とか。
「なーに難しい顔してんだよ」
そう言いながら温められたお弁当を目の前に置かれて
「や。なんかゴメン」
「今さら~(笑)」
俺だしお前だから気にすんなって
お箸を渡されて
「飲む?」
「うん」
「ちょっと待ってて」
冷蔵庫から取ってきてくれたお酒の缶を受け取る。
プシュッ
プルタブが2つ
開く音が響く。
なんだか久しぶりに聞いた気がする。
最後に聞いたのは…………
黒尾さん家。
そして、この音が好きですって言った私に
今日から俺もそう思うって言ってくれた、
付き合って間もない頃の黒尾さんの言葉を思い出す。
「はい、とりあえず乾杯」
「………うん」
「話したくなったら話せばいいよ」
「……………うん」
また涙が止まらない私を
困ったように見ているアキくん。
お酒を一口、二口。
そしてふーーーーッと
少しだけ深く、息を吐いて
半分くらい、一気に飲む。
「おぉ~いい飲みっぷり」
目の前のアキくんは、
いつも通り私を見て笑ってる。
ガタン
私の右手の缶が、テーブルに当たって
鈍く少し大きな音を響かせた。