第40章 お盆休み
ナンパ男たちを無視して歩き出そうとすると
「ねぇ、だーかーらーさぁ!
俺たちと飲みに行こうよ?ね?」
そう言いながら、ひとりに手首を掴まれる。
「………やめて下さい」
キッと睨みつけて
その手を振り解こうとするんだけど
…………振り解けない。
「はーい?」
そしてもうひとりにスマホを取り上げられる。
………え、なにこれ。
怖い
逃げなきゃ
だけど足はすくんで動かなくて
声も、出ない。
まわりに全く人がいないわけではないけれど
怖い
どうしよう
やだ
黒尾さん………
助けて…………!
「……ッオイ!」
「え?」
今度は突然
後ろから肩を抱き寄せられた。
「ねぇ。俺の彼女に何してんの?」
普段からは想像できない、威圧的な声。
「っち。
オネーサン、またねぇ」
「なーんだ。彼氏待ちかよ」
これ返すねぇ?って
もう振動していないスマホを返されて、
ヒラヒラと手を振る彼らに
身体はまだ、動かない。
「ほら、行くぞ」
「…………。」
手を引かれて
私たちもその場から離れる。
「お前なぁ…………って」
「ごめ、、なんか、怖くて…………」
最近また
涙腺が弱すぎる。
ポロポロと涙を流す私の頭を
アキくんが、なだめるように撫でてくれた。
「遅くなってごめんな?」
「ううん。ありがと……」
「………今日はもう帰るか?送るし」
「………ヤダ。帰りたくない」
ひとりになりたくないと首を振る私に
アキくんが困ってる。
でも今は、ひとりにだけはなりたくない。
「店、入れる?」
…………。
「………それか俺ん家、来る?」
「アキくん家が、いい………」
「おう。歩ける?」
なんの涙がわからない涙がなかなか止まらない私の手を引いて
ゆっくりと、歩いてくれた。