第33章 週末、最終便で
「ごめんなさい。嫌、でしたか?」
「………嫌なわけねーじゃん。
だけど、お前にこんなに気を遣わせて。
ほんっと、情けねーなって」
「私は私がやりたいことをやってるだけです。
私が、黒尾さんと一緒にお風呂に入りたいなって思ってんですけど。
でも、黒尾さんが嫌なら今日も別々に入りましょ?」
「……………はぁ」
…………あーあ。
ため息を、つかれてしまった。
「………マジで、ありがとう。
今までも奈々のこと好きだって思ってたけど。
だけど今、どうしようもなくお前のことが愛おしいよ」
そう言いながら、項垂れるように頭を私の肩に乗せて
そのまま抱きしめられる。
「今、ちょっと泣きそうでした」
「なんで?」
「黒尾さんに、ため息つかれて」
「あぁ。ゴメンな?あれは幸せのため息」
「………わかりにくいのでやめてください」
ほんとうに
「ごめんって。一緒に風呂、入ってくれる?」
「私が入りたいって誘ってるんですよ?」
「そーでした。そのお誘い、快く乗らせて頂きマス」
「じゃ、続きを」
そう言って黒尾さんのシャツのボタンを最後まで外して
「じゃ、今度は俺が」
今度は黒尾さんが私のブラウスのボタンを外してくれる。
「やっぱり、なんか恥ずかしいですね」
「今さら?」
「そうですけど」
「じゃ、やっぱやめとく?」
「………そうしましょうか」
「え"?!」
たぶん、今までの流れを考えると
予想外の返事が返ってきて驚いている黒尾さんに
ついクスクスと笑ってしまう。
「嘘です。今日は一緒に入ります」
そんな私にホッとした表情で
やっぱり、会えるってすごい。
表情がわかるって素敵だ。