第33章 週末、最終便で
「お邪魔しまーす」
2回目の黒尾さんのこっちのお家。
"1年だけ" と決まったワンルームには
最低限の家具と家電だけが置かれている。
黒尾さんの東京の家より、もっとシンプルな部屋。
だけどそれでもなんだか黒尾さんっぽくて
そして、東京の黒尾さん家と同じ香り。
前回、黒尾さん家の香りがしないのが
なんか不思議な感じですって言ったら、
翌日のデートで買いに行って。
あぁ、黒尾さん家だなぁって。
まぁ、自分の家もそうなんだけど(笑)
でも、そんな感じだから
こっちのお家もすでに好き。
「黒尾さん、お湯溜めてもいいですか?」
「ん。どーぞ」
「ありがとうございます!
じゃ、その間にご飯食べましょう?」
「そうしましょうか?」
「じゃあ、準備しますね~!
って言っても、チンするだけですけど(笑)
なんかパパッと作ったり出来たらいいんですけど、出来なくてスミマセン」
そんなことないって黒尾さんは言ってくれるけどら
今年の目標は "料理の腕を磨く!" にしようかな?
といっても、今年も残り約半分だけど。
テレビをつけたらたまたまあっていたバラエティ番組に
ご飯を食べながら二人で笑って。
「黒尾さん、お風呂入りましょう」
「お先にどーぞ」
私が髪を乾かすのに時間がかかるから
最近はそうやって言ってくれることも多い。
でも
「一緒に入りましょう?」
ね?って言いながら黒尾さんの手を取って
ビックリしている黒尾さんのことは知らんぷりして。
脱衣所まで引っ張っていく。
「私、夜の飛行機って好きなんですよね」
「………。」
「単純に夜景が綺麗なのと
あと、道路がはっきりわかるじゃないですか」
そう話しながら、黒尾さんのシャツのボタンを一つずつ外していく。
「それを見ると、今これだけの人がどこかに向かってるんだな~って。
家に帰る人、仕事に行く人、仕事中の人、
大切な人と一緒にいる人、大切な人に会いに行く人。
みんな、今からどこで何するんだろうな~って」
やっぱり驚いた顔で私のことを見ている黒尾さんに
ね?って問いかける。