第31章 二人の週末
今日は待ちに待った金曜日
3週間?
いや、もうちょっとかな?
とにかく、黒尾さんが帰ってくる日。
家で待っててって言われたんだけど、
少しでも早く黒尾さんに会いたくて
退社後そのまま空港へ。
ほとんど人がいない到着ロビーで、そわそわしながら一人で待つ。
電光掲示板に、到着の文字が光る。
出てくるまでにもう少し時間がかかるだろうから、
その前にもう一度お手洗いへ。
久しぶりに会うんだもん。
ちょっとでもかわいい自分で会いたい。
パラパラと人が出てきて
背が高い黒尾さんはどこにいても目立つ。
そしてスーツ姿の黒尾さんは、別の意味でも目立つ。
「黒尾さん!」
キョロキョロと私を探す黒尾さんの元に駆け寄って
「お疲れ様でした!」
「奈々もお疲れ。待たせてゴメンな?」
「いえ。私が待ちきれなくて勝手に待ってただけです」
そんな私の頭を、
笑顔でぽんぽんってなでてくれる。
二人で電車に乗って
「今日って一回帰ってきたの?」
「いえ?会社からそのまま来ました」
「ふーーーーん」
電車の中だから、小さな声でこそこそと話す。
「何ですか?」
「イエ。会社の奴らは俺より先に、こんなかわいい奈々チャンを見たかと思うと
ちょっと妬いちゃっただけですぅ~」
今日は先週買ったワンピース。
そんなこと言ってもらえたら、嬉しくて
思わず口元が緩む。
「これ、黒尾さんとのデートのために買ったんですよ?」
「マジで?」
「マジです!ちなみに会社で私がワンピース着てるの珍しいのか
今日デート?って聞かれたので、
そうです!ってちゃんと音符マーク付きで答えてきましたよ?」
「良くできました」
「ただ黒尾さんと、とは言ってませんけど(笑)」
会社ではもちろん内緒。
だけど