第27章 無事に(帰宅後)
帰ってお鍋の準備をしてたら、玄関のインターホンが鳴って
モニター越しの黒尾さん。
あれ?鍵は?
なんて思いながら玄関を開ける。
「お疲れ様でした」
「奈々も。はぁ、ただいま~」
「おかえりなさい。
黒尾さん、鍵は?」
疑問をそのまま
「んーあるよ?だからここまでは来たし」
あ、そうだ
オートロックは抜けてきてるんだ。
「じゃあ、なんで?」
「奈々が玄関開けてくれて
奈々におかえりって言って欲しかったから」
そんなこと言われたら、なんだか照れる。
玄関ドアの鍵を閉めたあと、黒尾さんにこっち来てって言われて
チュって。
「なんか、恥ずかしいです」
「そお~?俺は帰ったら奈々がいて、最高だけど」
"なんだか新婚さんみたいですね"
なーんて
冗談でつい、溢しそうになったけど。
わざわざ傷付きたくもないから、
その言葉はそっと飲み込む。
「ご飯の準備もう少しかかりそうなので、先にお風呂どうですか?」
「ご飯にする?お風呂にする?
それともワ・タ・シ?ってヤツ期待してたんだけど」
笑いながら
「だけどご飯がまだだったか~。残念。
ありがたく先に風呂入らせてもらいます」
そんなこと言う黒尾さん。
ネクタイを緩める姿は、私が好きな黒尾さんの仕草のひとつ。
ねぇ
今の言葉。
それには、何か意味がある?
なーんて一瞬、思ってしまったけど。
たぶん、いつものただの冗談。
黒尾さんがお風呂から上がってくる頃には
お鍋の準備もできていたから
さて!食べましょう!だったんだけど。
先にお風呂に入っておいでって言われて
今はドライヤータイム。
やっぱり髪を乾かすのに時間がかかる。
だけど、ついこの前、
黒尾さんに「もう少しそのままで」って言われたからなぁ。