第26章 無事に
さおりが初めての担当を持った時
おめでとう。頑張ってね!の気持ちを込めて
ちょっと高級なチョコレートを渡した。
それを覚えてくれていたことも嬉しいし、
嬉しかったって改めて言ってもらえたことも嬉しい。
そしてなにより
自分がしてもらえると、やっぱり嬉しい。
「無事に終わって、本当にホッとしてる」
「わかる~。けど奈々は準備もちゃんとしてたから。
大丈夫だと思ってたよ~」
「ほんとに?嬉しい。今めちゃくちゃ達成感!」
「その気持ちもわかる!週末の開放感もヤバいよ~!
今日は?黒尾さん?」
「うん」
「いーなぁ!何するの?」
「たぶん今年最後のお鍋」
「いーなぁ。私もそういうのんびりしたデートしたい」
「黒尾さん家でだけど、たぶんいいよって言ってくれるし来る?」
「黒尾さん家っていうのは興味あるけど、大丈夫です。
じゃあ待っとくの?」
まだ仕事中の黒尾さんを、二人でチラリと確認。
「先に帰って準備するから帰ります」
「えーーーーー何ソレ。
私も自分家以外に帰りたーーーーい!!!
え、合鍵もらったの?」
「違うよ。今日だけ借りてる」
合鍵とか憧れるけど
そんな図々しいことを言う勇気はない。
「ふーーーん。どっちでも羨ましいわ!
じゃ、私も帰ろーっと!」
そう言いながら帰る準備をするさおり
「もしかして、待っててくれたりした?」
「さて、どうでしょう?」
さおりの心遣いに、感動。
やっぱり仕事ができる女は違う。
さおりとはいつも通り駅で別れて
でも、いつもと違う電車に一人で乗って
黒尾さん家の近所のスーパーで買い物。
いつもは基本的に一人分の量だけど、
二人分の買い物は、心なしか楽しい。
黒尾さんと一緒にしか来たことがないスーパーに
一人でいるのも新鮮。
買い物途中で、黒尾さんから今会社出たって連絡も来て
たぶんちょうどいいくらい。
仕事は無事に終わったし
これから黒尾さんとお鍋だし。
今手に入れた食材とお酒は割と重いけど
足取りは軽い。