第2章 食事へ
16時。
あと2時間で定時だ~!って時計を見る。
昨日修正した資料は無事オッケーだったし、今日はもう何もありませんようにって目の前の仕事だけを片付ける。
「奈々、黒尾さんが呼んでる」
「なんだろ?」
「昨日のやつじゃない?」
「えー?でも大丈夫だったし」
とりあえず、黒尾さんのとこに行く。
「何かありましたか?」
「ちょっとこっちきて」
「……はい?」
フロアの隅の資料とかを置いてあるとこに連れて行かれる。
「今日定時で帰れそう?」
「あ、はい」
「そ。よかった。
ただ昨日言ってたお店の予約取れなかったんだよね。
だからいつも行ってるとこでもいい?」
「………あ」
やば。
「えーーーー。ちょっとーーーー。まさか忘れてた?」
「え、や、そんなことないです」
「クロオさん、ショックーーー」
「いや、ほんとにすみません」
「うそうそ。もし予定入れちゃったんなら大丈夫」
「いや、相変わらず予定はないです」
「でも俺も無理に連れてったらパワハラだしなー」
「いや、黒尾さんがよければ、行きたいです……」
申し訳ないなって思うけど。
まだできるだけ一人にはなりたくなかった。
「ほんと?俺、無理やり誘ってない?」
「それはないです」
「よし。じゃあ今日は定時に上がるぞ。
どうする?俺は会社から一緒に出てもいいけど。
気になるなら駅で待ち合わせる?」
「あ、じゃあ駅で」
「じゃあ出たら連絡するってことで。ごめんな、仕事中呼び出して」
「いえ。じゃあまた後ほど」
そう言って自席に戻る。