第22章 バレンタイン(当日)
「はい。初めていれました。私飲めないし。
だからコーヒーに関しては味とかまったくわかんないんですけど。
インスタントよりはいいかな~って思って」
「インスタントじゃないって、じゃあドリッパーで?」
「ドリッパーって何ですか?」
コーヒー用語?
全然わかんない。
「なんかこういう形の、カップとかの上に乗せて。
で、ペーパーフィルター重ねて?」
「あー!それでやってみました!」
「持ってるのが意外」
あ、元彼?って後ろに小さく付け足されたけど。
「違いますよ。
黒尾さんが来てくれるから準備したんです~!」
このコーヒーは大好きな黒尾さんのためなんです!
って、そこまではなんとなく恥ずかしくて言えなかったけど。
「今、本当に感動してるわ」
「そうですか?よかったです!」
頭をぽんぽんってされて
ふふふ、嬉しい。
「すげーもったいないけど、食べない方がもったいないので頂きます」
丁寧に手を合わせる黒尾さんに、
お口に合えばいいですがって隣から添える。
自分が作ったもの、特にお菓子は初めてだし
どうかな?ってドキドキする。
「んーーーーー。
めちゃくちゃ美味いな」
「そう言ってもらえてよかったです」
たぶん黒尾さんは不味くても美味しいって言ってくれるだろうけど。
だけど、ガトーショコラはまぁまぁ自信がある。
というかレシピが間違いないヤツを見つけてるからなんだけど。
私も隣で食べてみる。
自分で言うのもアレだけど、今回もなかなか美味しくできたんじゃない?
「あ」
「ん?」
「ちょっとお待ち下さいね」