第21章 バレンタイン（前日）

私の髪の毛をふわりと触る、黒尾さんの手が心地いい。





「んーーー！

そんなこと言われたら、頑張って乾かすしかないじゃないですかー！」



「もうちょっと今の奈々見せて？」





そんなことを言われたら。





「んんん！頑張って乾かします！

あ、黒尾さん、先にお風呂どうぞ！」



「一緒に入る？」

「大丈夫です！」



「えーーーーーー（笑）」





被せ気味に返事をしてしまったけど。


だって恥ずかしい。





「とりあえず！入ってきてください！

あ、タオル準備しなきゃ」





一緒に入らないの？っていう黒尾さんをスッとかわして脱衣所へ。





「このタオル使ってください。

使い終わったらこのカゴに入れててもらえたら大丈夫です」



「ありがと。じゃ、お先にお風呂いただきマス」





黒尾さんがお風呂の間に洗い物を済ませてたら、お風呂上がりの黒尾さん登場。





「お先しました」





………。





「え、なに？」



「いや、スーツの黒尾さんがうちにいるのも不思議だったけど

お風呂上がりのスウェット姿の黒尾さんがうちにいるのが、もっと不思議です」



「早く慣れて？」





左の広角だけを上げてた

あーーーーーーその顔。ずるい。





「慣れたいような、慣れるのがもったいないような」





ほんとそう。





「あ、私もお風呂入ってきます」



「いってらっしゃ～い」





そんな私に対して

くくくッと笑いながら見送られた。