【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第9章 おもいでのお菓子と…
「何を考えているんだオレは…」
そんなこと、許されるはずがない。
グレイスは王子の側仕えのオレなんかより、もっと高貴な身分の人と結婚するべきだ。
責任感の強いグレイスだから、あからさまな政略結婚を持ちかけられれば、それも自分の役目だと受けるかもしれない。
そうはならなければ良いと切に願う。
これから自国他国問わず、貴族や政治家辺りと知り合う機会はいくらでもあるだろう。その中で良いと思える人に出逢ってくれれば…
「……っ」
そこまで考えて、目頭が熱くなるのを感じたオレはそこから零れようとする何かを堪えるために上を向いた。
滲んだ視界に映るのは、隅々まで繊細な装飾が施された荘厳な城の天井。
居室の扉はおよそ一般家庭ではありえない豪華な金色に彩られたデザイン。それと違和感なく馴染む一級品の調度品。
何重ものセキュリティチェックを通過しなければ入ることの出来ないこのエリア。
グレイス・ルシス・チェラム…
その名が示す通り、グレイスは生まれた時からここで暮らすのが当然な人間で、
王妃様の亡き今、ルシス一特別な女性なのだ。
わかってる。そんなことは出逢った瞬間からわかっていた。
だからオレはさっき、自分に言い聞かせるつもりで
『グレイスにはいつか王子様が来る、ふさわしい人が。
そして、それはオレじゃない』と伝えたんだ。
「グレイス…」
チェラム家の名で、王女として城にいる間だけでも、どうか仮初めの兄としてで良いから傍にいさせてほしい。
どうか、今だけは。
自分の立場は、わかっているから…。