第9章 おもいでのお菓子と…

一口かじったパイケーキを持ち上げ、「イグニスってすごいな～何でも出来ちゃうんだな～」と呟きながら色々な角度からケーキを眺めているグレイスが可愛らしい。

その表情を微笑ましく見つめていると

「ねぇイグニス、今度私にお料理教えてよ」と予想外な願いをグレイスが口にした。

「え…オレがか？
せっかく習うなら城内のシェフに頼んだ方が良いんじゃないか？」

「ん～…でもそれだと相手は気遣ってやりにくそうじゃない？
気心知れたイグニスとなら楽しく出来そうだから…ね？

お願い、イグニスおにーちゃん！」

（おにーちゃん、か…）
グレイスはそう言って両手を顔の前で合わせて頼んできた。

オレは一瞬どうすべきか悩んだが
「まぁグレイスの言うことも一理あるし、オレで良ければ付き合おう」

と受け入れることにした。