【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
「──、グレイス、どうしたんだぼーっとして」
「…えっ。あっ、ごめんごめん、どれも美味しそうだから迷っちゃって…イグニスのオススメとかあるかな?」
「そうか? なら良いが…そうだな、オレはここだとシーフードドリアを食べることが多いな」
「あぁ、海鮮、おいしいよね、私それにするよ、うん」
ざわざわと落ち着かない心を押し込むようにイグニスの提案に乗っかりオーダーを決めた。あとはデザートに昔の小説でよく見かけて気になっていた喫茶店メニュー、プリン・ア・ラ・モードを。イグニスはビーフシチューにもちろんエボニーコーヒーをセットにするらしく店員さんを呼んだ。
するとまもなくやってきたのは奇しくも先程の女性店員。イグニスが二人分のオーダーを伝えている間、随分と熱心に顔を見つめているのが気になるし、合間合間に「いつもありがとうございます」とか「それ、お好きですよね」とか言葉を挟んでくるのが耳につく。
それに対してイグニスはどうということもなく淡々とオーダーを伝えて、まだ何か言いたげな店員さんに対してパタンとメニューを閉じて「これで終わりだ」と言わんばかりの態度を取ってくれたのがせめてもの救いだった。
(いつも、あんな感じなのかなぁ)
向けられる敵意を感じる目線、イグニスとやたら積極的にコミュニケーションを取ろうとする接客態度。
あぁ嫌な予感しかしない。
オーダーをキッチンに伝え終わったのか、先程の女性店員は今度は近くのテーブルを片付け始めた。恐らく会話が聞き取れるくらいの距離。
「ほんとにエボニー好きだよね。いつからだっけ?」
試しにイグニスの話題を上げてみれば、わかりやすくこちらへ向けられる意識。
ねぇあなた、手が止まってるよ。
やっぱり。この女性もイグニスに好意を寄せているんだ。
盗み聞きなんてお行儀の悪い。でも決してこの距離で彼の名前は呼ばない。私の大切な彼の名前を教えてやる義理なんてないもの。