【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
‐翌朝、寝室にて‐
浅くなった眠りから醒めていく過程で、誰かが優しく髪を撫でてくれていることに気付く。
(あぁ…、気持ちいい…)
眠りと覚醒の狭間、意識がふわふわしたこの瞬間もとても好きだし、それに加えて温かで柔らかな刺激が最高に心地良い。
ふと懐かしい、幼い記憶が蘇る。
いつも多忙な父がこうして寝覚めを見守ってくれたのはいつのことだったか。
今、自分にこの幸せを与えてくれている人は父ではないと頭の片隅では理解しながらも、夢と現実をまだ行き来している脳が思考を曖昧にする。
目の前にいるであろう誰かの姿を確認したくて離れたがらない瞼を何とか押し上げると、ゆっくりと焦点が定まり段々と人の輪郭を作り始める。
(──イグニスだ)
「起きたか? おはようグレイス」
「うん…おはよう」
寝起きで掠れがちな私の声とは対照的に、いつもの穏やかな声が届く。
あぁそうだ。イグニスには昨日・一昨日と私の部屋に泊まってもらって、それで…
そこまで考えて、それぞれの夜の情事を思い出してじわり熱の集まる頬を隠すようにそっとイグニスの胸に顔を寄せた。
──彼に初めてを捧げて、二晩続けて身体を繋げたんだ。
(昨日は身体の痛みが辛くて余裕がなかったけど、落ち着いた今朝はやけに意識しちゃうな…)
「グレイス? どうかしたのか?」
家族のような穏やかな幸せと、一人の女性として愛される幸せの両方をくれるイグニス。ちら、と目線を上げてその顔を見れば、真っ直ぐに見つめてくれる翠の瞳と目があって、寝起きで力の入らない顔でふにゃりと笑って答えた。
「幸せだな、と思って」