第24章 カレシとカノジョ

もう一度、キスを唇に戻す。
決して荒々しくない、咥内でお互いの存在を確かめ合うような柔らかなキス。
それと一緒に、全く引っかかりのない手触りの良い髪や首、肩周りをゆっくりと撫でていく。

「ん…、っは…。
イグニスの手のひらとハグから、体温が伝わってきて気持ち良い…」

表情と口調からして、グレイスの言う『気持ち良い』は『心地良い』のニュアンスなのだろうが、まずは緊張が解れたならば十分だ。

「それは良かった。
これは愛撫…愛情の愛に、撫でると書いて愛撫という行為だからな。恋人同士だけに許された行為を通じて、存分にオレの愛を感じてほしい」

「あい、ぶ…？　そんな言葉があるんだ…愛情をもって撫でる…、確かに今にぴったりな言葉だね」

そう言って口元を綻ばせるグレイスにつられてオレも一緒に微笑んだ。
どうやら先程まで全身を覆っていた強い緊張は影を潜めようで、肌を撫でながら段々とブラウスの前を開けていったが、今度は身体の強張りは感じなかった。
そのまま鎖骨から下へと手を下ろしていくと、他の部分とは明らかに異なる柔らかな感触が指先に当たり、ドクンと心臓が跳ねた。