【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第22章 FINAL FANTASYワールド
こんな押し問答のようなやりとりをしているうちに、グレイスの部屋の玄関ドア前にたどり着く。
オレはグレイスの手をとり、両手ごとぎゅっと包み込み、真剣な表情でグレイスの深い青の瞳を見つめる。
「こんなことを言うのもするのも、グレイスにだけだ。
さっき、花火の後にも言ったが…過去に閉ざしてしまったオレとの未来の可能性を含めた上で、グレイスがこの先どんな道を選びたいのか改めて考えてみてほしい。
それでもやはりオレとは別の道を進むというのなら、以前約束したように、きっちり従者として弁えた振る舞いをする。
オレの一存でグレイスの気持ちを何度も振り回してすまないと思っている。
だが、どうしてもこのまま諦めたくなかったんだ、許してくれ…!」
オレが話している途中から、グレイスの肩が小刻みに震え出し、目には瞬き一つでぼろぼろと零れ落ちそうな程の涙が一杯に溜まっていた。
「わか…った…、
ちゃんと、考え、て…返事、…するから…」
子どもの頃から変わらない、澄んだ冬の夜空によく似た深い青の眼。そこに涙の揺らめきを乗せた瞳は、輝く星たちを取り込んだように美しい。
こんな風に悩ませてしまって、本当に申し訳ない…この瞳を揺らす涙は、幸せな感情のものだけにしてやりたいのに…。
「ありがとうグレイス。
今日は、楽しかっただろうが、一日出歩いて疲れもしただろう。
ゆっくり休んでくれ」
状況的に帰りずらいであろうグレイスを促す為に、エレベーターに乗ってからグレイスの手に握られたままのカードキーを玄関ドアにかざしてロックを解除してやる。
デリケートな雰囲気に、神経や五感が敏感になっているのか、ピピッという電子音の後、ガチャリと鍵の回る音がやけに耳に響いた。
「さぁ…グレイス、おやすみだ」
「うん…おやすみ、なさぃ…」
「あぁ」
ゆっくりとドアへと身体を向けて玄関へと入っていくグレイスを見送った後、一拍置いてからカチリと内鍵が掛けられる音がした。
その音に、オレとグレイスの間に存在する壁を強調されたような気がして、ズキリと胸が大きく痛んだ。