【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第19章 未来の王と、その軍師
ノクトの一言から、あの時の…涙を零しながら王女としての決断をしたグレイスの顔が即座に脳裏に浮かんだ。
「良い…とは言い切れないが、グレイスのあの覚悟を込めた表情を見たら、オレは納得するしかなかったよ」
「覚悟、な…。
グレイスもそうだし、昔親父の手を振り払って帝国に捕まったルーナもさ、気持ちの強さっていうの? 純粋にすげーわ。
昔話のお姫様にはさ、毒リンゴ食ったり、糸車の呪いで眠っちまって、王子様が来るまで寝て待ってる、みたいなのもあるくらいなのに二人は全然違うのな」
「そういう話も確かにあるが…お姫様自身が、自分の目で見て考えて、自分で進む道を決める物語もあるからな。
ぼんやりしていると、あっという間にグレイスやルナフレーナ様達が道を切り開いて、お前が寝て待つお姫様になってしまうかもしれないぞ?」
「うっせ」
ノクトが発したのは短くぶっきらぼうな言葉ながらも、そこにはもうさっきまでの気まずさや、ギクシャクとした空気が抜けているのが伝わってきたのにほっとして、自然と口元が緩んだ。
「お姫様といえば…グレイスが特に気に入っている話があるのは知っているか?」
「知ってる、ガラスの靴のお姫様だろ? アイツの部屋の机、難しそうな専門書いっぱい並べてるくせに、いっつも一番目につくところにあの絵本置いてあんだよな。
なんであんなことしてんだ?」
「それはな…グレイスはあの絵本に出てくるような魔法使いになりたいんだそうだ。
皆を笑顔に出来る、そんな人になりたい、と。
しかも、そう思ったのはノクト、お前がクリスタルから『真の王』に選ばれるより前らしいぞ。
辛い時や心が義務感に染まってしまいそうになる時に、あの絵本を見返して初心を取り戻しているとも言っていた。
だから、グレイスのあの自分以外を優先する考え方は生まれ持ったものも大きいのだろうな」