【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第16章 決断
イグニスを見送って、ドアが閉まった数秒後。
グレイスの目には再び涙がこみ上げてきた。
「うっ…、う…、うわぁぁぁぁん!!!!!」
ベッドに突っ伏して、勝手に張りあがる声を飲み込ませる。
好きなのに、好きなのに。
こんなにどうしようもないくらい、好きなのに。
両想いだったのに。イグニスも同じ気持ちだったのに。
掴みかけた幸せを、自分の意志で手離す決断をしたことを間違っているとは思わない。
自分にはそうする必要があるから。理由があるから。
だが、頭でわかっていても、心がついてくるかは全く別問題で。
張り裂けそうな心を隠さず全て泣き声に乗せて吐き出す。
想いが通じ合った者同士なら、夜な夜な身を寄せ合い、互いに抱いた恋心を愛の言葉にして囁き合えば良いだろう。
でも、誰にも言えない秘めた恋心は、想いが通じ合ってもそれを口外することさえできなくて。
だからせめて、行き場のない想いを言葉にならない声に乗せて一人吐き出す。
「あぁぁ…ひっ…く、ぐすっぐす…うっ、うっ、うあぁぁん!!」
イグニスが退室してまもなく大声で泣き出したグレイスの声は当然彼にも届いており、その声は耐え難い程にイグニス胸を締め付けた。
今すぐにでもドアを開けて「やはり考え直さないか」と声を掛けたい、せめて苦しそうに声をあげる彼女の背中を抱きしめてさすってやりたい。
そうは思うものの、そのどちらもグレイスの王女としての尊い決断を否定することになる。
あんなに泣く程の悲しい気持ちを押し殺し、ケジメだと言ってイグニスとの本来の関係性を改めて明確にし、自分の進むべき道を選択したのだ。
それが分かっているから、決して部屋に戻ってはいけない、とイグニスもまた自分の想いを必死に抑え込んだ。
噛みしめた奥歯は力が入り過ぎズキズキと頭痛を引き起こすし、握りしめた拳は血が滲む程だった。
さっきの今で、自分の軽率な行動によりグレイスの心を踏み荒らすことがあっては決してならないと何度も何度も自分に言い聞かせ、彼もまた身を引き裂かれる思いでその場を離れた。