【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第10章 初挑戦
「…美味しい。
グレイス、すごく美味しいよ」
分かりやすい言葉ゆえによく伝わる、喜びと甘さを含んだ言葉と、
イギーの大きな手が頭に上に降りてきて…
彼の表情に思わずハッとして目が釘付けになった。
弧を描いたように目が線のようになるまで細め、
普段は行儀よく閉じられている事の多い口を、整った歯列が覗くくらいニッコリと大きくあけて…
目が離せなくなる、今日一番の笑顔で笑いかけながら…頭を撫でてくれた。
(あぁ…私、今…幸せだな)
その声と笑顔を見た瞬間、胸の中を染め上げた感情は『幸せ』だった。
王子の側近となるべく、イギーこそ厳しい英才教育をずっと前から受けていて、子どもの頃から私のお父さん…つまりレギス陛下と対面することもある立場から、人前で見せる表情一つにしても厳しく躾られてきたはずだ。
その人が、今こんなに無邪気に少年のあどけなさを感じさせるような笑顔になってくれている。
きっとこれは、私には本当に気を許してくれている証拠。
その確信に心が満たされる。
大勢の人間が行き交うこのお城の中で、この笑顔を知っているのは私だけ、もしくは私とノクトお兄ちゃんくらいなんじゃないかという自惚れさえ抱きたくなる。