第10章 初挑戦

「本当だ、色つきの動物さんクッキー可愛い～！
お味はどうかなー？」

早速味見をしようと手を伸ばす私をイギーがぱし、と掴む。

「待ってくれグレイス。
取り出したばかりの焼き菓子はかなり熱い。ここはオレが…」

そう言ってイギーが指先…というかほぼ爪先？ で慎重にクッキーを１つつまみ、ふーふーする。

その吹かけられる息に飛ばされて湯気も流れてるのが見えるから確かにかなり熱そうだ。


「これくらいで良いか…

よし、グレイス。食べてみてくれ」


そう言ってイギーが冷ましてくれたクッキーをこちらに向けてくる。


「…えっ！？
あ、わ、私！？」

てっきりそのままイギーが味見するとばかり思ってたから、大げさに慌ててしまった。


「もちろんだ。味見、したがってただろう？

それに今日はグレイスの料理初挑戦記念日だしな。
よく頑張ったご褒美に最初に食べてくれ。

ほら、あーん」

「ん…。ぁ………あーん」


スプーンやフォークからではなく、直接イギーの指から私の口の中にハート型のクッキーが差し込まれる。

こんなにあっさりフツーに手掴みの『あーん』されるなんて、やっぱり恋愛対象外なんだよなぁという想いに胸がわずかにツキンと痛むけど、
イギーに特別大切に可愛がってもらえるなら…それでいい…って自分で決めたんだ。

現状の満足を確認して、クッキーをモグモグと咀嚼する。