【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第10章 初挑戦
「今日はレシピ通りに作ったから分量も手順も悩むことはなかったけれど、
あのパイケーキを作るためにイグニスは何度も手探りで試行錯誤してくれてたんだよね…」
「あぁ、再現したい一心でな。
あのパイケーキはノクトにとって辛いことがあった中でも特別良い思い出のようだし、
オレが作れるようになればあの時食べ損ねたグレイスにも味わわせてやれると思ってやってるところだ」
「い、イギー…! なんて弟妹想いな優しい人なの!? いつも本当にありがとう!
………だいすき、だよ」
そう言ってイギーの頬にキスをする。
イギーへの気持ちを自覚してからは初めての『だいすきのちゅー』。
一瞬躊躇ったけど、これは昔から何度もしてきたこと。
それに、恋人としては対象外でも、王女や妹としてならあなたの特別でいられるってわかってるから。
自分とあなたの立場を理由にしたズルい考えかもしれないけれど、せめてその立場からだけでも傍にいて、気持ちを伝えさせてほしい。
あなたのことをだいすきなのは…本当だから。
「こちらこそ。グレイスのその喜ぶ顔が見たくてやってるのもあるからな。
オレも大好きだ…ちゅっ」
前と変わらずキスを返してくれるイギーの笑顔に内心ホッとする。
でも、それと同時に『グレイスの喜ぶ顔が見たくて』なんて言われると、
その何でも映しこむ宝石のペリドットように美しく澄んだ瞳は、私の隠した恋心や思惑さえも見透かしてしまいそうな気がして、そっと目線を足元のオーブンへと移した。
タイミング良くタイマーの残り時間はあと少し。
さっき、変に意識してごちゃごちゃ考えて…
ロクなことにならなかったことを思い出し、完成間近の興奮の勢いで頭を切り替えて、
「もー…ありがと!
またそんなモテる男性の見本みたいなこと言うー!
ほら見て、もうすぐ出来そうだよ!」
そう明るく声を出した。