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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




「・・・・・・」

傍に立つ彼の呼びかけに返事ができないまま、視線すら合わせられなくて。

俯いて知らず知らず握った拳の力を強めていると、突然体に優しい温かさが訪れた。

それが彼の腕の中だと知るまでに、時間は必要なくて。

「僕の言葉は、生半可に聞こえますか?」

・・・優しくも、真面目な声色。
抱きしめられているせいで、それは全身で感じられた。

ああ・・・どうしよう。
タガが外れたように、また何かが溢れ出てしまいそうで。

「いいえ・・・」

グッとそれを我慢しながら何とか返事をすると、透さんは私の肩を掴み、抱きしめていた体を優しく離した。

「では、信じてください」

・・・綺麗な目。
その真っ直ぐな目を向けられ、誰が否定できるだろうか。

「それと、私なんかで、なんて言わないでください」

賢く、器用で、ズルい人。
そう思うことは今も変わらないが、意味合いは変化を見せていて。

「僕は、ひなたさんが良いんです」

彼のその賢さも器用さも、そしてズルさも。
全て、努力の末に手に入れたものなんだろうな、と思えるようになっていた。

「ただ、手放すつもりはありませんので」

説得力、というものをここまで肌で感じさせた人物は、彼で二人目だ。
一人目は無論、赤井さんで。

やはり二人は、どこか似ている部分があるのだと感じ直した。

「覚悟は持ってくださいね」

・・・覚悟。
FBIとして、そして彼を選ぶことへの。

その覚悟と言うのは、言葉だけでは重みを感じにくいが・・・私にとっても、彼にとっても。

とてつもなく大きく、重たいものだ。

「ひなたさん」

改めて呼ばれる名前に、肩がピクリと反応する。

「好きですよ」

何度目かの告白に、今度は心臓が反応を示す。

「・・・ッ」

何をどう答えても、不正解に感じる。
その状況で私はどんな言葉を言えば、正解になるのだろう。



 
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