第5章 ピンクのクッション(S.I)
「ただいまー…疲れた〜」
そこそこ大手の商社で管理職に就いている私は、今日も終電で帰り着いた。
部屋に入ると、リビングの灯りがついていてテレビの音が漏れている。まだ起きてるのかな?
リビングに入ると、ピンクの大きなクッションに埋もれて寝息を立てている年下の彼がいた。
開いたままのノートパソコンに、床には資料に使う本が何冊も積んである。ライターとして仕事が増えてきてこんな姿をよく見るようになった。
「ただいま。ちゃんとベッドで寝ないと。」
肩を揺するけど、「ん、ん」と顔の向きをこちらに変えただけ。
メガネを外してあげてテーブルの上に置く。私が好きだと言った彼の髭。愛しくて頬擦りした。
「…んあ、あ。おかえり」
「起きちゃった?いたずらしようとしてたのに」
「…んじゃ、また寝る」
そう言ってまた目を閉じた。薄ら笑いを浮かべながら。