第3章 奇抜な彼(Y.S)
後で調べたら、大変な事だった。
あの彼は日本の音楽界を席巻するバンドのドラマーだった。
小柄な体からは想像できないパワフルなパフォーマンス。奥様も同様の三味線奏者だった。
失礼な事をしてしまったな…と少し落ち込んだ数ヶ月後、彼のバンドの音楽の沼にどっぷりはまった頃。
「すいません」
「いらっしゃ…」
彼が、あのかわいい奥様と来店してくださった。あの花を大変気に入ってくれた事、初めて花をプレゼントした事が照れ臭かった彼が、私の話ばかりをしてちょっとケンカになった事、いろいろな話をした。
私は彼にこれしか言えなかった。
「サイン、ください」
彼は弾ける笑顔で応えてくれた。
「何枚でも!ライブも招待しますよ!」