第10章 新婚旅行(K.A)
俺の初恋は見事に実り、恋焦がれた彼女と入籍まで至った。少し生意気だけど彼女にそっくりでかわいい娘もできた。
「さくら!いつまで髪の毛いじってるの!時間ないよ!」
「だって前髪決まらないんだもん!」
こんな朝のやり取りも俺には微笑ましくてしょうがない。
「あなたも!ニコニコしてないで早く行かないと!」
ついでに怒られてしまった。…あなた。あなたか…。
「パパぁ!途中まで乗せて〜!」
娘は、実の父を「お父さん」と呼んでいるので俺の事は「パパ」と呼ぶ事にしたようだ。…パパ。パパかぁ。
「うふふ…」
「今日も幸せそうだねパパ。今度の旅行なんか行ったら嬉しすぎて狂っちゃうんじゃないの?」
俺の職場の小学校と、娘の中学校へと分岐へ向かう車内でそう言われた。
「そ、んなことないよ…」
「あははっ間があった。あっ、友達だ。ここで降りるね!パパありがとー!いってきまーす」
「いってらっしゃい」の言葉はドアを閉める音にかき消された。
パワフルだ…。一緒に暮らしてみてわかったが女性はみんなそうなのか?彼女もなかなかなもんだ。